犬が人を噛む理由は「リーダー意識」ではない
犬が人間を噛む理由について、
「飼い主がリーダーになっていないからだ」という主張をする人がよくいます。
これは犬のしつけの本にもよく書かれていることで、確かにそういう部分もあるかも知れませんが、最近、これに異を唱える説も強くなっています。
ここではそうした説を紹介します。
リーダー論は、「犬=狼」から来ている
そもそも犬がこうして「誰がリーダーか」を考えて行動基準としているという「リーダー論」は、犬がもともとオオカミだったということから来ています。
オオカミの世界には階級社会がはっきりと存在しており、犬もそこから派生しているのだから、彼らと同じように階級社会を持っているだろう、という発想です。
確かに犬の先祖はオオカミと同じです。
しかし、それを言うなら人間の先祖は海にいたのだから、人間と魚の習性は同じでなければいけないはずです。
もちろんそんなことはないですよね。どんなに先祖が共通だったとしても、そこから長い時間が経過していたら、まったく別の動物になるのが当然なのです(全ての生物は、そうして進化と分化をしてきたのです)。
例えばリーダー論を主張する人はその根拠として「犬はリーダーが群れの中で最初に食事をとる」とか「リーダーが先頭を歩く」ということを上げています。
しかし、これらの特徴は犬だけのものであり、オオカミには見られません。
オオカミが階級社会で生きているから犬も同じはずというなら、こうした犬の特徴とオオカミの特徴も同じはずなのです。
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しかし、実際はそうではありません。
ということは、もうオオカミと犬はそれぞれ独自の進化を遂げた別の動物と考えるべきです。
なので、犬が噛み付く理由を「飼い主がリーダーになっていないから」と考えるのは間違いです。
犬は、全ての家族と一対一で付き合う
では、階級の発想を持っていないなら、犬は家族とどのように付き合っているのかというと、一人一人と個別の関係を築いているのです。
つまり、父→母→兄→妹→犬、というような順番ではなく、「父&犬、母&犬、兄&犬…」というように、一人一人と一対一で関係を築くのです。
そして、その関係の中でどのような態度を取るかは、その人とのこれまでの関わりによって変わってきます。
例えば何か芸をした時にしっかり褒めてくれたりおやつをあげてくれたりする人の言うことは素直に聞き入れます。
反面、そうした芸をしても何もくれない人に対しては、いうことを聞かなくなります。
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なので、犬が自分の言うことを聞いてくれなかったり、あるいは噛み付いたりした時には、「自分がリーダーだと思っている」からではなく「その人のことを単純に信頼していない」と考えるべきでしょう。
つまり、どっちが上か下かではなく、信頼できるかできないかで、彼らは行動を決めているわけです。
「犬は従順な生き物」という先入観を捨てる
特に日本人は「犬は従順な生き物」という先入観を持っています。
「フランダースの犬」「名犬ラッシー」「忠犬ハチ公」などの物語に触れることで、子供の頃から刷り込まれてきた一種の常識と言えます。
しかし、上に書いた通り犬は元々オオカミです。オオカミの階級社会こそもう消滅していますが、相手を噛む本能など、動物としての野性のエネルギーはまだ残っています。
なので、いつもいつも大人しくロボットのように人間のいうことを聴いていると思ったら大間違いなのです。
フラストレーションが溜まったり、ちゃんと散歩をしてもらっていなかったりしたら、犬も爆発して噛み付くことはあります。
このような犬の本来の特性をよく理解し、常に従順でいるわけがないという前提に立った上で、噛み付かないようにするしつけやトレーニングをしっかりしていきましょう。
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